「おじさんの壁」の向こうに
先日、80年代に官僚としてご活躍されたとある女性へのインタビュー記事を目にした。
そこでは当時女性の低待遇が続いたのは「おじさんの壁」があったからだと力説されていた。全くもって想像に難くない。内容自体の掘り下げはここではしないが、職業柄私の脳裏にはイメージとしてのビジュアルがいくつか即座に浮かんできた。
例えば、
- 5人のスーツを着たおじさんがスクラムを組んで隊列をなしているシーン
- 数人または1人のおじさんが片手の手のひらを広げて突き出し、さしずめ「これ以上はだめ!」といったポーズをとっているシーン
などなど。他にもあるにはあるが、ほとんどが上記のバリエーションなので省く。
彼女の活躍した時代背景に思いを寄せれば、登場人物全てが「男性のおじさん」とならざるを得ない。まぁありふれた発想ではある。
しかし、2020年代はどうだろう?
世間を見回すと、本質的な構造はあまり変わっていないように見える。例えばTVをつけても政治や災害対策本部や某公共放送の経営委員会の面々などごく稀に女性がちらほら混じりつつも基本は男性、それもおじさんが全面に出てきている場面が目立つ。世代が一巡しても「おじさんの壁」はまだまだ高く聳え立っているのかもしれない。
なのでイメージを現代にアップデートする!と意気込んでちらほらと女性を混ぜてみる程度のコンセプトでは、本質論的には単なる誤魔化しにしかならないだろう。
そこで、全て女性にふって同様のポーズをとる、というようなアプローチを想像してみた。
男性中心だと「おじさんの壁」となるが女性中心だと「おばさんの壁」とはならないような気がするから不思議だ。なんなら「不正はダメ!」とか「物価高にNO」というような同じ「ダメ!」を表現するポーズだったとしてもむしろ社会的に物申す的な印象を個人的には感じたりもする。
私という57歳の男性がおじさん文脈であれこれと言及するのもいろいろブーメランなのだけど、イメージビジュアルの創作は、一つの文脈やコンセプトからでも無数の打ち出し方が可能だという点は強調しておきたいし、そこが個人的にもおも白がれる要素の一つ。
これからも旧来型の「おじさんの壁」を破壊し、さまざまな壁のあり方を想像してみようと思う。悪い「壁」ばかりではないのだ。
探求は続きます。