ローカルとグローバルの間で

「韓国ドラマはどうしてここまで人気になったのでしょうか。」

という質問に対して、韓国人脚本家のイ・シンファさんの答えに僕の意欲ソナーが反応しました。

「韓国の視聴者の求めるレベルが高いということがあると思います。目が肥えていて、好むジャンルも次々と変わっていくような韓国の視聴者を、まず満足させなければならない。グローバル人気は、その結果としてついてきているのだと思います」

「「キャー」と叫ぶのはもうNG?韓国脚本家に聞くドラマ作りの難しさ」2023年3月23日朝日新聞DIGITAL

ローカル市場に徹底的に向き合った結果としてのグローバル市場での成功。

ベンチャー界隈でよく言われる(言われた?)”いきなり世界規模で考えよ”とは逆説的な思考といえます。

とはいえ、双方のアプローチは「グローバルで成功することは良いことだ」との共通観念が前提になっています。まぁ後者は世界規模の動画配信サービスに載せているわけですからそういう目的が前提にあっても不思議ではありません。

しかし、一方で「韓国企業は自国の市場規模が小さいので常に海外で成功するにはどうすべきかとの視点が欠かせないのだ」といった言説もよく聞かれます。モバイル端末などの製品やK-POPに代表される音楽産業はもしかしたらこちらに近いのかもしれませんね。なので脚本家の言葉はあくまでも成功要因の一つの見方だと捉えておくのが良いでしょう。

ただ、このインタビューで僕のソナーが反応したポイントは、韓国ドラマはいわゆるサービスや製品と異なり、韓国の独自文化をも海外(≒少なくとも日本およびアジア近郊市場において)に受け入れさせてしまう途轍もないパワーの源泉が、市場規模という数字以上に彼の国には存在しているのかもしれないという観点にありました。日本市場はよくガラパゴスだと言われますが、その辺りの違いについてはもう少し踏み込んでみたいところです(宿題!)。

ところで、「グローバル」と一言で表現されていますが、人はそれを「一つの何か」として一括して認識することはできないのではないでしょうか。なぜなら世界の本質は「多様性」だと思うからです。

一気に世界を平たくみるのではなく、ローカルの集積のリージョンとして、リージョンの集積のグローバルとしての向き合い方が必要なのではと考えたりしています。つまり、韓国ドラマの成功要因の一つは、韓国社会に徹底的に向き合い、その中でローカルの人々に支持されたその部分が他の国にも文化的共通点共感点として受け入れられた、との解釈も成り立つでしょう。

これは “Think locally, act regionally, leverage globally”(「現地で考え、地域にあわせて行動し、グローバルの仕組みを活用せよ」)いえるかもしれませんいう指向性として捉えられるかもしれません。この言葉はスタバの成長戦略の引用らしいですが、「韓国ドラマ産業は徹底的に自国に向き合いつつ、映画配給やネットフリックスなどのグローバルに存在する仕組みを活用した」ということになります。僕自身もいわゆる” Think globally,act locally”よりも今のところしっくりきている指向・行動指針です。

その意味で、表象的な差異により文化間での受け入れられ方が大きく異なる我がイメージビジュアル分野においても参考にすべき点が多そうです。極めて大雑把にいうならば、ローカル間の共通点を帰納的に引き伸ばして国際間(この場合は文化間?)の共通点を探っていくアプローチとなりましょうか。

無理やり式化してみました:

世界で共通するイメージビジュアル領域=(Local∩Local) ∩ (Region∩Region) ∩ Global

ま、探求は続きます!

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